福井晴敏 川の深さは

 オウムネタ・北ネタを使った国家規模のサスペンス。描写は小気味良くて、読んでいて非常に気持ちがいい。
 人生に挫折して、日々を無為に過ごしている男がいる。やがて彼はある出来事をきっかけに国レベルの陰謀に巻き込まれていく。
 彼の小説は、こういうパターンが多い。拠るべき何かを失っている。陰謀は個人レベルの話に絡んで書かれているのが魅力的?
 主人公は警備員で、その生活がよく描かれている。よく描かれてるなあと思って経歴を見ると「警備会社に勤務している」とあった。なあんだ。
 人物だけでなく、目標を失い、拠るべきなにかを無くして漂う日本という社会が書かれている。彼の文章を読んでいると、思わず自分の「社会への対応のあり方」を考えて直してしまいたくなる。社会のクズみたいな自分でもだ。
 これからはちゃんと選挙に行こう。(そういう問題か?)